株式会社アイ・ティ・アール(本社:東京都新宿区、代表取締役:内山悟志、以下「ITR」)は、ERPおよび連結会計の国内60社のソフトウェア・ベンダーの製品の調査を行い、国内市場規模および動向を「ITR Market View:ERP市場2010」としてまとめました。2008年度の国内ERP市場の出荷金額は約918億円、前年比3.0%の減少となりました。2008年度前半まで続いていたERP市場の成長は、2008年度後半に直撃した世界的な不景気の波により急ブレーキがかかり、マイナス成長をもたらしました。2009年度はその傾向が強まり、前年比7.2%の減少と下げ幅が拡大すると見込んでいます。
ERP市場をパッケージとASP/SaaSの提供形態別で比較すると、2008年度のパッケージ市場は出荷金額が前年比で5.3%減少しているのに対し、ASP/SaaS市場は同27.7%増となることが確認されました。景気後退の影響を受けて、新規投資の凍結や延期の影響が色濃いパッケージに対し、アウトソーシングや初期のASPから徐々にサービスを拡充してきたASP/SaaSベンダーへの支持が堅調だったことが背景にあります。2009年度もこの傾向は続き、パッケージ市場は前年比で約10%減、ASP/SaaS市場は約19%の伸びを維持すると見ています。
ITRのプリンシパル・アナリストである浅利浩一は、「ASP/SaaS市場の成長性を牽引しているのは、主として人事給与分野でサービスを提供するベンダーです。ただし、やや過熱気味ともいえるサービスの乱立が価格競争につながり、サービス単価の低下がベンダーにとって収益の圧迫を招いています。売上げは伸びているものの利益の確保が難しいといった課題を内在しており、ユーザー企業は注意が必要です。また、現在、SaaS、PaaS、IaaSといったクラウド・コンピューティングがIT動向の中核となっていますが、これまでオンプレミス型のERPパッケージを中心に発展してきた基幹系業務分野においてどのような革新を起こすことができるかによっては、企業およびベンダー双方にとって大きなインパクトとなるでしょう。例えば、現状では頭打ちの中小企業向け市場をどの程度活性化できるかといった期待は大きいでしょう」とコメントしています。