ITRは2025年11月18日に、年次フォーラム「IT Trend 2025」を、東京・京王プラザホテルで開催した。今回のテーマは「不確実性に挑むエンタープライズAI」。予測不能な変化が続く今日のビジネス環境では、AIに代表される革新的な技術をエンタープライズワイドに展開し、データを駆使した意思決定と業務遂行を実現することが鍵となる。本フォーラムでは、プリンシパル・アナリスト 浅利浩一による基調講演をはじめ、NTTドコモソリューションズ株式会社 駒沢健氏、アナリスト 村井真人による特別講演、ITRアナリストによるアナリストセッション、ITベンダーによる特別セッションの全15セッションが行われた。
AI技術を活用した新経営OSやエージェンティックデータ基盤の導入、自律的な組織運営の強化により「センス&レスポンド型」が現実解に
まず、基調講演では、プリンシパル・アナリストの浅利浩一が「AI駆動エンタープライズへの変革」と題し講演を行った。講演では、不確実な時代におけるエンタープライズAI、AI駆動エンタープライズへの指針・具現像、IT部門が果たすべき役割といった3つの論点を解説した。
ITRでは、予測不能な時代における企業運営のあり方を示すモデルとして、約四半世紀前の2002年に「センス&レスポンド型」のマネジメントスタイルとITインフラを提唱していた。当時はさまざまな制約からこのモデルを実現できた企業は多くなかったものの、現在ではAI技術を活用した新たな経営OSやエージェンティックデータ基盤、および自律的な組織運営を強化することで現実解となったことを説明した。
プリンシパル・アナリスト 浅利 浩一
NTTドコモソリューションズのAI活用の攻めと守りのアプローチと成功要因
特別講演では、NTTドコモソリューションズ株式会社の駒沢健氏による「AIの攻めと守り、業務にどのように組み込むのか」と題した講演を行った。
初めに、同社の「Our AI Strategy ~2 Way Approach~」を紹介し、攻めのアプローチとして、「“使ってみる”文化の醸成」「AIツールの積極的な試用推奨」「成功事例の社内共有」、守りのアプローチとして、「AIガバナンスの構築」「ガードレールの設定」「リスク管理の徹底」を解説した。また、「Success Factor」として、AIの活用は攻めと守りの両輪であること、ビジネスシナリオは効果を見据えて設計すること、そして、AIから期待通りのアウトトップを日本語で得るためには、インプットとなる情報が正しい日本語で記述されていることが重要であり、そのための訓練が必要性であると説明した。
NTTドコモソリューションズ株式会社 ネットワーククラウド事業本部 プラットフォームサービス部 部長 駒沢 健氏
不確実性に挑む企業には、探索力・適応力・統合力を獲得するための「攻め」と「守り」の両輪への投資が求められる
続いて、アナリストの村井真人が「『IT投資動向調査2026』が示すDXとAI投資の最新動向」と題し、ITRが毎年実施している「IT投資動向調査2026」を基に、国内企業のIT投資の最新状況、DX推進とAI活用の現状と投資予算、不確実性に挑む企業に求められる能力とIT投資について解説した。
まず、2025年度のIT予算の増減傾向について、前年度から「増額」と回答した企業が過去最高を更新し、過去の実績から2026年度も過去最高を更新する可能性があると解説した。また、業種別での売上げに対するIT予算比率は「金融・保険」が最も高く、最重要課題としては「システムの性能や信頼性の向上」が挙げられたと述べた。投資が期待される製品・サービスとしては、「AI/機械学習プラットフォーム」「AI支援開発」「生成AI」といったAI関連が上位に位置づけられ、AI関連予算を計上する企業は75%に達したことを紹介した。
アナリスト 村井 真人
これらを踏まえ、村井は「AIの適用領域の多様化が予想される中、不確実性に挑む企業には、探索力・適応力・統合力を獲得するためのイノベーション創出やクラウド/データ/AIの活用といった『攻め』と、システムやAIの信頼性およびセキュリティ強化といった『守り』の両輪への投資が求められる」と提言し、午前の講演を締めくくった。
午後には、ITRのアナリストによるセッションとITベンダーによる特別セッションが行われ、AIに関する多様なテーマについて、最新動向の解説が行われた。