AI時代のオープンイノベーションでは、自社だけでは解決できない課題を起点に、必要な知識や機能を見極め、適切なパートナーを選定し、価値仮説、役割、ルールを設計する必要がある。さらに、本番化、事業化、共同運営までを一貫して進め、得られたデータや知見を次の改善へ還流させることが重要となる。本稿では、その進め方を7つのステップで整理し、AIの活用場面と企業が留意すべき点を示す。
AI時代のオープンイノベーションは、外部の技術や知識を探索し、実証実験を行うだけの活動ではなく、幅広い企業・組織がデータ、AIモデル、業務知識、顧客接点を持ち寄り、構想から開発、事業化、運営、改善までを共同で担う必要がある(ITR Review『AIが拡張するオープンイノベーション』R-226092)。AIは、社内外に分散する情報の探索、課題の構造化、異分野の知識の組み合わせ、仮説の生成、実験結果の分析を支援し、探索対象の拡大と検討サイクルの短縮化を実現し得る。しかし、AIによって協業候補や事業アイデアを大量に生み出せるようになっても、それだけで成果が生まれるわけではない。取り組むべき経営課題や顧客課題を選び、誰にどのような価値を提供するかを明確にし、実現に必要な能力をもつパートナーを組み合わせる必要がある。さらに、各社の役割、責任、知的財産、データ利用、費用負担、利益配分を設計し、技術実現性だけでなく、顧客価値、業務適合性、事業性を検証しなければならない。
したがって、AI時代のオープンイノベーションは、パートナー探索からPoCへ進む直線的な活動ではなく、課題設定、価値仮説、体制設計、実験、事業化、共同運営、学習を一体として進める循環型プロセスとして捉えるべきである。事業運営から得られたデータや知見を次の課題設定や事業改善に還流するとともに、参加企業の構成や各社の役割を柔軟に見直していくことが、共創を持続的な事業成果につなげる鍵となる。AI時代のオープンイノベーションでは、従来の進め方に加えて考慮すべきことがある。AIを活用することで、探索領域が格段に広がり、選択肢が多数となるため、候補選別や検証の負荷が増大する。また、AI出力の不確実性を前提に、人による承認・検証を強化する必要がある。そのため、企業はAIを前提として共創プロセスを再設計することが求められる。ここでは、その進め方を7つのステップで整理する(図1)。