Google DeepMindの研究チームは2026年6月、人工汎用知能(AGI)から人工超知能(ASI)への発展経路を検討した論文『From AGI to ASI』を公開した。同論文で注目されるのは、AGIの実現時期を予測するのではなく、AGI到達後に能力がどのように向上しうるか、また何がその進展を制約するかを複数のシナリオで整理している点にある。
2026年6月12日、Google DeepMindは『From AGI to ASI』と題した論文を発表した。論文タイトルが、AGI(Artificial General Intelligence:人工汎用知能)からASI(Artificial Superintelligence:人工超知能)への発展を示唆することから、昨今増えつつあるシンギュラリティ(技術的特異点)の到来をセンセーショナルに論じたものに感じられるかもしれない。結論を要約すれば、70年前にAI分野研究の創始者たちが目指した目標が、いよいよ達成される時代になった可能性に言及し、「今後10年から20年の間にAGIの段階を通過し、ASIの領域へと突入する可能性は容易に否定できない」と述べている。その前段として、AGI到達後の能力進展のドライバ(促進要因)とブロッカー(阻害要因)を整理している。
遠くない将来にAGIが登場しさらに進化するといった時間軸は、AGIを過度にマーケティングする姿勢とは一線を画し、冷静で科学的な見解を提示したものといってよいだろう。これは、一部のベンダーにみられる、「AGIが到来すれば全て解決する」といったハイプ的な熱狂とは大きく異なる。AI技術の今後10年は、現在の延長線上にあり、派手なブレイクスルーがないと読み替えてしまえば、市場に拡大するインパクトもない地味な研究論文に過ぎないと評されるかもしれない。先が読めない不確実な時代にあって、なぜGoogle DeepMindは、このような論文を世に問うたのだろうか。ともすれば、AIを万能の魔法のように語り、資金を集めるビジネスのために利用するような風潮に一石を投じたことは確かである。また、「AIは危険だ、規制が必要だ」と抽象的に叫ぶだけでは、実効性のあるルールや対策を講ずることも難しい。AGIからASIへの発展経路を科学的かつ実務的に考察しつつ検討すべきである、といった意図があるのではないかとITRではみている。