生成AIが非常な勢いで社会や産業界に革新をもたらす一方で、企業はかつてない技術変革の波に直面している。AIネイティブの時代に向かうなか、先駆的な技術採用やビジネス適用をすることで、先行者利益を獲得する体制を備えなければならない。それには、生成AIの適用機会とその価値をビジネス視点から整理することが推奨される。
2022年11月にChatGPTがリリースされて以来、国内企業における生成AIの活用が加速度的に進んでいる。ITRが2023年8~9月に行った『IT投資動向調査2024』によると、2024年度に新規導入が進む製品・サービスは、1位「AI/機械学習プラットフォーム」、2位「生成AI」と、AI関連が最上位に位置づけられる結果となった。今後、AI活用がますます多くの企業で推進されるようになると予想される。
一方、こうした急速な環境変化の波によって、先んじて生成AIに取り組み、新たな価値を創出する企業ばかりではない。急ぎChatGPTの社内ガイドラインの整備を進めるも、その後の戦略やロードマップが適切に描かれていないといった例は少なくない。生成AI関連のワーキンググループやプロジェクトを組成するが、ゴールが定まらず、十分な活動成果をあげられないケースも見られる。
これらの課題の原因は、生成AIを活用した案件の目的が適切に設定されていないことにあると考えられる。そこで、課題解決の一助となるよう、本稿では創出する価値の観点から生成AIに関わる案件の分類を試みる。生成AIは、クリエイティブワークを助け、マニュアル業務のリードタイムを短縮する非常に有益な技術ではあるが、デジタル技術の一種であることには違いない。そのため、生成AI案件を、DXで推進される変革・改善施策、つまりDX案件のひとつとみなして分類してみる。