クラウドサービスの利用拡大に伴い、クラウドのコスト管理の課題が顕在化している。企業全体でクラウドのコストを最適化し、ビジネス価値を最大化するためのプラクティスであるFinOpsへの取り組みが、欧米企業を中心に注目されている。本稿では、FinOpsが求められている背景を説明し、FinOpsの概念とフレームワークについて述べる。
近年、企業におけるクラウドサービスの導入が急速に拡大し、オンプレミスからクラウドへの移行が加速している。これにより、ITリソースを柔軟かつ迅速に拡張しながら利用することが可能となるが、これは同時にクラウドのコスト管理に課題をもたらしている。従来のITの購入モデルでは、ハードウェアやソフトウェアのコストは予測が可能で、ある程度固定化することができた。一方、クラウドサービスは「Pay-as-you-go」モデルを採用しており、使用した分だけ課金されるため、コストが変動しやすく予測が難しくなっている。さらに、クラウドの利用が部門ごとに異なることが、コストの把握をより一層難しくしている。実際、ITRの調査では、クラウドサービスの支出が計画した予算を超えてしまっている企業が44%にも上り、予算を20%以上も超過した企業は23%となった(図1)。