DXを推進する国内企業は増加し、多くの企業が全社的な課題と位置づけて体制整備を進めているが、成果を獲得する例は一部にとどまる。DXプロジェクトの成功確度を高めるためには、その要因を的確に把握したうえで、DX推進における戦略施策を立案・遂行することが求められる。
第4次産業革命による経済・社会のデジタル化の進展、新型コロナウイルス感染症がもたらしたデジタルコミュニケーションの需要、さらには政府によるDX推進に向けたさまざまな施策が追い風となり、企業におけるDXの取り組みが進んでいる。こうしたDX気運の高まりによって、従来アナログで行ってきた業務の部分的な電子化やデータ化は進んでいる。しかし、業務プロセス全体のデジタル化や、価値創出へ向けたビジネスモデル変革に至る例は限られており、結果として多くの企業はDXの成果を十分に獲得していない。ITRが『IT投資動向調査2023』においてDXの16テーマに対する企業の取り組み状況を調査し、独自に算出した「DX実践度スコア(100点満点)」は全体平均が33.0点となった(ITR Insight 2022年夏号『DXの成果獲得へ向けた戦略施策とIT投資のあり方』#I-322073)。これは、「多くのDXテーマでプロジェクトが実施されているが、成果はあがっていない段階」という水準に該当する。
具体的な成果を獲得するには、DX推進の成功要因が何であるかを理解し、自社DX戦略に反映することが求められる。ITRでは、DX推進企業を対象にした『デジタルビジネス動向調査』(2020年8月調査)と『デジタル&メタバース利用動向調査』(2022年8月調査)においてDXプロジェクトの成功要因を尋ねている。本稿では、これらの調査結果から、成功確度を高めるために求められる戦略施策について考察しよう。