企業がDXで成果をあげるには、当事者となる従業員がその目的を理解することが重要となるが、時として既存の業務手順に固執し、DXによる変化に対して理解を示さないことがある。本稿では、DX推進者が従業員にその価値を説き理解を促すひとつの題材として、「データ活用による顧客の行動分析」を提示する。
多くの企業で取り組みが進むDXであるが、ITRが行った『IT投資動向調査2023』の調査でも、成果の出ている企業はほんの一握りであることがわかった。DXを実践フェーズに移行し、成果創出に向かうには、当事者である従業員がDX推進の目的を理解し、構築される情報システムなどを積極的に活用することが重要となる。
しかし、時として従業員は既存の業務手順に固執し、DX推進を阻むことがある。DX推進者が従業員の意識変革を図るためには、DXの目的であるビジネス成果(ゴール)の状態と、自身の業務の現状とのギャップを客観的に示し、DX推進に必要性を理解させることが望ましい。具体的には、例えば、売上げが低迷している営業部門に対して手段として「ECサイトの構築」を提案するのではなく、販売目標(ビジネス成果)と現状とのギャップを示し、そのギャップを埋めるために「ECでの売上げの増大」を提案することによって、納得を得られやすくなる。
その際、業務とビジネス成果の関係に対する理解を従業員に促すのが、「データ」の提示である。業務を取り巻くさまざまな事象から発生するデータは、ビジネスの状況を客観的に表しており、共通理解を得やすい。そして、ビジネスの事象と結果である経営指標を関連づけ、因果関係を探ることは、背景に存在する課題解決の糸口になることが多い。これには、ゴールである経営指標に関連するKPIによって可視化する手法が一般的だ。しかし、実際にゴールに直結する効果的なKPIを特定することは容易でない。そこで、ここでは具体的な業務例をあげて、データの有効性をいかに評価し活用すべきかについて探ってみたい。