従業員の「ウェルネス(健やかでいきいきとした状態にあること)」が、企業の人材戦略においてキーワードとなりつつある。従業員の心身の健康状態を良好に保つためのテクノロジの活用は、今後に向けた人的資本への投資という観点からも注目される取り組みとなる。
経営において、近年ひとつのキーワードとなりつつあるのが「ウェルネス」である。ウェルネスとは、イルネス(病気を患った状態)の対義語として生まれたものだが、企業経営においては「従業員の心身の健康状態が良好であり、いきいきと働ける状態」を指す言葉として用いられることが多い。ウェルネスが注目を集める背景には、従業員の健康状態が福利厚生の面だけでなく、業績の向上や離職率の低下など、経営上の重要指標と深く関わる要素であると認知されるようになったことがあげられる。ITRが2022年5月に実施した大企業の勤務者を対象にした調査では、自身の心身の健康状態が「良好」と答えた人は、「普通」「不良」と答えた人よりも、勤務先とのエンゲージメントが明らかに高い傾向が示された。
心身の健康状態が良好なグループは、「勤務先の業績は好調だと思う」「今の職場にできるだけ長く勤めたい」という項目に対して、「大いに当てはまる」と回答した人の割合が他のグループのほぼ3倍に上った(図1)。企業として、従業員のウェルネスを重視することは、採用や教育、配置転換などと並び、経営目標を達成するための人材戦略の柱のひとつに位置づけられると考えられる。