DXの推進にあたっては、旧来のIT環境が阻害要因になるケースがあるため、ITインフラやアプリケーションなどの情報システムを再整備するとともに、ITの企画・開発・運用の手法やプロセスを含むライフサイクル全般を変革する必要がある。
DXに向けたIT環境の再整備を「レガシーシステムの刷新」と捉える向きがある。例えば、経済産業省が2018年に『DXレポート~ ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』で指摘した「2025年の崖」を乗り越えるために、レガシーシステムを刷新することがDXの必要条件と解釈している人が少なからず存在する。これは間違いではないが、DXを推進するにはそれだけではなく、ITインフラやアプリケーションなどの情報システムを再整備するとともに、ITの企画・開発・運用の手法やプロセスを含むライフサイクル全般を変革する必要がある。
それでは、なぜIT環境の再整備が必要なのだろうか。それは、DXの推進において求められているIT環境と、現状の情報システムやIT運用プロセスの間にギャップがあり、それがDX推進の阻害要因となっているからである(図1)。DXでは、不確実なビジネス環境に加えて、技術革新が著しいなかでの未知への挑戦が求められる。そのため、早期の立ち上げ、先進技術の活用、軽やかな始動および適宜柔軟な拡張と縮小、そして顧客や利用者の要求に即した迅速かつ継続的な改善が求められる。一方、現状の情報システムは、これまで成功してきたビジネスを安定的に支えることが求められてきた。その結果、計画と長期に及ぶ開発が必要で、複雑化してブラックボックスとなっているために機能追加も難しい状況となっている。さらに、多大な初期費用とともに維持コストも肥大化していることに加えて、開発や修正に費やす期間が長くなり、迅速な対応が困難となっている。このようなDX推進のために求められるIT環境と、現状の情報システムやプロセスのキャップを解消することが、DXのためのIT環境再整備の重要なポイントとなる。