さまざまなデジタル技術の開発が進み、ビジネスへの適用・活用が見られるなか、企業におけるテクノロジ採用への関心が一段と高まってきている。本稿では、最新の調査結果を基に、DX推進企業におけるデジタル技術採用の現状と将来動向を概観する。
企業においてデジタル技術やデータを活用したDXの取り組みが進んでいる。DXは、ビジネスモデル変革や企業システムの転換を通じて競争優位を産み出すことを目的としている。そのためには、変革に不可欠であるデジタル技術/データを、他社に先駆けて試行・実験を行い、早期に活用フェーズに乗せることが重要だ。先行者利益をあげることで、市場において優位なポジションを築くことができるからである。さらにその取り組みが専門性や独自性の高いものであれば、知財マネジメントやライセンシング管理などの手法を駆使して、他社に対する参入障壁を築くことも後々の有効な戦術となろう。
これまでも企業はビジネスにおいてさまざまな技術を活用してきたが、今日DXの文脈で語られるデジタル技術とは、デジタライゼーションの実現を導く、より先進的な要素技術やスキルを指す。各分野のデジタル技術は日進月歩で進化しているため、競争優位を導くうえでは、常にその動向を捕捉し、自社ビジネスへの適合性を評価し続けなければならない。技術動向の趨勢は予測が難しく、短期間のうちに多数の支持を得た技術が瞬く間に失速するということも起こり得る。一方、技術ブレークスルーにより、再評価されて非常なスピードで社会に浸透するケースもある。例えば、現在あらゆる業務や場面で活用され、一般社会に浸透している「AI」は、過去に大きな2度の失墜を経験している。第3世代となる今日のAIの躍進は、機械学習とニューラルネットワークによるディープラーニングによって認識や推定の精度が高まり、実用的となったことが普及の背景にある。