ローコード/ノーコード開発プラットフォームを採用する国内企業が増えているが、現状ではかつての4GL/RAD/EUCの過ちを繰り返す方向にある。過去の失敗を省みて、ローコード/ノーコードを採用する意向を持つ現場は、IT部門の関与なしに自部門で検証/導入/開発/運用を行うべきである。
プログラミング経験のない人でも簡単に企業アプリケーションの開発ができるとされるローコード/ノーコード開発プラットフォーム(以降、「ローコード」と略す)の利用が、国内企業でも拡大している。ITRが2020年9月に従業員数500人以上の国内企業を対象に行った『国内ローコード開発実態調査』から、ローコードの活用状況を図1に示す。検討・利用を行う企業のうち約3分の1がすでに本番システム(全社用・特定部門用)でローコードを利用しており、16%の企業が本番に向けてテスト中であることがわかる。また、ITRでは、2022年度のローコードの市場規模は824億円であり、2025年度には1,539億円に拡大すると予測している(図2)。同市場の年平均成長率(CAGR)は24.4%(2020~2025年度)と、PaaS/IaaS市場やAI市場よりも高い値を予測している(図3)。今やローコードに全く興味のない国内企業は稀有といえよう。
ローコードは、新しい概念でも新しい革新的なソフトウェアでもなく、以前は「超高速開発ツール」や「迅速開発ツール」、その前は「4GL(4th Generation Language)」や「RAD(Rapid Application Development)ツール」とも呼ばれていた。国内で「ローコード」という単語が一般化し始めたのは2020年前後と考えられる。例えば、ローコードの「Microsoft PowerApps」は比較的新しい製品と見られているが、初リリースは2015年であり、当時の日本では「超高速開発ツール」という用語が一般的であった。
このようにローコードは、以前から存在するツールであるが、DXが多くの企業の重要戦略となった今、アプリケーションを迅速開発する価値を理解する経営者や事業部門が増え、かつクラウドサービスでの提供が多くなり導入が容易になったことから、国内企業に広く知られるようになった。