新型コロナウイルスの世界的大流行は、世界貿易を支えるサプライチェーンを崩壊させた。現在でも、半導体不足やエネルギー供給不安などに起因する、先行きの見通しが難しい需要と供給の不均衡が続いている。レジリエンスは、危機からの回復力や強靭性を指すキーワードであるが、不確実性の時代において企業はサプライチェーンのレジリエンスをさらに高めていかねばならない。
全てのものづくり企業に共通する受注出荷と生産、つまりSCMの真の狙いは、マーケティング、製品開発、生産技術、品質保証、納期・受注出荷、顧客サービスといった主要プロセスの全局面で顧客満足度の向上を図ることである。新型コロナウイルスのパンデミックにより、あらゆるモノと人の移動そのものが大きく制限されたことから、サプライチェーンおよびビジネスの活動は著しく停滞するに至った。さらに、世界経済がパンデミックからまだ完全に回復していないなか、ロシアのウクライナ侵攻に起因する制裁措置や、エネルギー供給不足などの不連続な危機への対応も迫られている。このような不確実性の時代を象徴する事象のひとつとして、あらゆる産業に多大な影響を与えている半導体不足がある。自動車、家電、設備・機器のデジタル化は半導体の需要を増大させているが、その供給不足は現在も続いている。
例えば、自動車産業では生産や納期の見通しが立たないため、受注を停止せざるを得ないという深刻な影響を被っている。また、車両そのものが納品されても、注文したオプションが省略されていたり、下位グレードに置き換えて出荷されたりもしている。あるいは、後日のソフトウェア・アップデートでハードウェアとしての半導体機能をエミュレーションして代替するといった、設計の変更に類する対応を余儀なくされているケースもある。このような、本来の需要を売上げに転換することができない状況を改善するためには、製品としての半導体だけでなく、半導体を構成する多くの素材や部品の源流に遡って納期を確定しつつ、生産設備を保有するファウンドリの生産計画との調整を図る必要がある。そのためには、サプライチェーンの点と線をつなぐ調達物流、社内物流、販売物流といったロジスティクスを安定確保することが前提となる(ITR Review 2021年10月号『急務となる物流DX』#R-221101)。