企業が構築する情報システムには、顧客や取引先といった社外向けの他に、従業員が利用する社内向けシステムもあり、その体験価値は業務の成果に大きな影響を及ぼす。後編となる本稿では、社内システムにおけるUIの「使いやすさ」のために、IT部門が考えるべき要点について考察する。
企業は事業活動を進めるうえで、ステークホルダーとなる顧客・取引先・従業員に対してさまざまなソフトウェアを介してサービス提供を行っている。そして、そのソフトウェアとユーザーの直接の接点となるUIは、サービス・製品を利用するユーザーの体験を構成するうえで重要な要素である。前編(ITR Review 2022年5月号『ユーザー体験価値を高めるUIの重要性(前編)』#R-222053)では、顧客や取引先など社外向けの情報システムにおけるUIの一貫性と標準化の重要性について言及した。後編となる本稿では、社内向けの情報システムのUIに目を向け、それらを使いやすくするために考慮すべき要点と、IT部門が果たすべき役割について述べる。
企業の情報システム構築のためのソフトウェア開発手法は日々進歩しており、専門知識を持たない業務部門のユーザーでも簡単に開発ができるSaaSやローコード/ノーコード型開発プラットフォームなどのサービスやツールが提供されてきている。こうした状況の下、各企業においては、積極的にDXが推進され、多数のシステム開発が行われているであろう。これらのシステム開発は、ビジネスの変化に対応すべく、迅速かつ低コストで進められることが多い。
このように、開発主体者がITエンジニアだけでなく、業務部門にまで拡大する現状では、各開発案件で作成されるソフトウェアの品質にバラツキが生じることが考えられる。操作性の著しく悪いUIが作られることも予想され、業務のパフォーマンスを低下させる可能性がある。ITを統制する役割を持つIT部門としては、このバラツキに対しガイドラインを提示し、UIの品質も一定水準に保ちたいところである。
各企業のIT部門では、これまでのシステム開発においても、UIに関して何らかのガイドラインをドキュメントとして整備していたであろう。しかし、大量のドキュメントとしてまとめられたガイドラインを、全ての開発者が熟読することはおそらくないであろう。また、採用する開発ツールも新しいものに変化していくなかで、その都度ガイドラインを維持管理することも現実的ではない。したがって、IT部門は使いやすいUIを構築するために、全ての開発者に対して品質維持に関する啓発を行う必要がある。