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【R-222043_6963142407】ERP市場における変化の兆し

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 16, 2023 3:10:48 AM

コロナ禍による自粛要請が続くなか、2020年度の国内ERP市場の伸び率は前年調査時の予測をわずかに上回り、好調な勢いを継続している。本稿では、最新の市場調査レポート『ITR Market View:ERP市場2022』の発刊に先立ち、同市場に見られた新たな変化の兆しと、今後の市場展望について述べる。

ERP市場最新調査現場からのフィードバック

ITRでは、毎年国内ERP市場の調査を行っており、最新の調査結果をまとめたレポート『ITR Market View:ERP市場2022』は2022年3月に発刊する予定である。今回の調査対象ベンダー数は、前年の『ITR Market View:ERP市場2021』での48社のうち2社減および新規のベンダー1社が追加となり、合計47社となった。今後も、新興ベンダーを含む市場性の高いベンダーと製品を拡充しつつ、実情に合わせ新陳代謝していく方針である。本稿では、ベンダー各社への取材を通じて浮き彫りになったリアルな状況を確認してみよう。

ERP市場全体としては、2020年度の売上金額は前年度比6.9%増となり、前年調査時の2020年度予測(5.8%増)を上回った。その要因のひとつに、コロナ禍を契機に国内企業においてクラウド利用が拡大していることがある。なかには、自社のクラウドサービスの売上げが前年の1,000%を大きく超えたと見られるベンダーもある。多くの説明は不要と思われるが、働く環境が多様化したことや、紙を主体とした旧来のビジネスから脱却する必要性に迫られた企業が依然として多いことが背景にある。また、ブラウザのIEのサポート切れがクラウドソリューションの売上増の契機となったとするベンダーもあった。一方、SaaSの成長は好調であるものの、ビジネス効率、すなわち契約から収益までの回転率が下がったとするベンダーもあった。従来のオンプレミスに近いパッケージをパブリッククラウド上で運用する形態「パッケージ(IaaS)」に対して、SaaSの場合は、クラウド化の変化が及ぼす影響を業務・システムの両面から慎重に検討する企業が増えたことがその理由である。

かといって、従来からのパッケージ(オンプレミス)も想定を超える大きな減少は見られない。導入済みシステムに対する追加ユーザーや追加機能への需要や、新規の大型案件においては、まだパッケージが指定されることが少なくないからである。ただし、パッケージ(オンプレミス)への依存が高いベンダーのなかには、半導体の供給不足がサーバの調達に影響し、売上げが遅延する影響があったとの声も聞かれた。

なお、全てのベンダーが好調だったわけではない。コロナ禍の影響で顧客との密接な折衝ができなかったことから、案件のパイプラインが切れ、業績がよくなかったベンダーもある。