テレワークの普及は従業員の働き方を変える転機となったが、コロナ禍の長期化に伴い、課題もまた顕在化している。その一因となっているのが、常時オンラインであることを強いられる同期型コミュニケーションである。本稿では、テレワークを前提とした働き方において、生産性と働きやすさの両立を図る手段としての「非同期型コミュニケーション」の価値について再考する。
コロナ禍によって一気に採用が進んだテレワークは、いつでもどこでも働ける環境を実現した。だが、その一方で心身の不調やストレスを抱えるようになった働き手も少なくない。その原因としてはさまざまなものが想定されるが、そのひとつとして最近になって指摘されているのが、「同期型コミュニケーション」に依存した働き方の問題である。常時オンラインであることを強要されたり、メールやチャットの即時の返信を求められたりすることは、精神的な負担が大きく、そのうえ知的労働に必要な集中力を奪うことから生産性にも悪影響を及ぼすことが指摘されている。PCやスマートフォンに頻繁に送られてくる通知メッセージを煩わしく感じた経験は多くの人が持っているだろう。
コロナ禍が表面化した当初に事業継続のために緊急措置的に実施したテレワークの際はやむを得ないが、コロナの収束の有無によらず恒久的にテレワーク(またはオフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワーク)の定着を目指す組織であれば、この問題にメスを入れることが不可欠である。つまり、「非同期型コミュニケーション」をより優先的に取り入れるべく、社内のコミュニケーション形態を再考することが求められる。