DXを含む企業変革の推進には、デジタル化にとどまらず組織カルチャーの変革などの多岐にわたる取り組みと、変化に対する人の抵抗への対処が必要となる。変革の道筋に定番のプロセスやひとつの正解があるわけではないが、道に迷ったときの羅針盤として変革ジャーニーマップを参考に、自社の変革の歩を進めてもらいたい。
DXを含む企業変革は、終わりのない長い旅といえる。変革への取り組みは、行き先も、経路も、旅程も全て自分で決めて、時には大きな経路変更をしながら進むものであり、トリップでもトラベルでもなく、ジャーニーと呼ぶにふさわしい。外部環境は常に変化し、社内にも「変化に対する人の抵抗」があるなか、変革の道筋に定番のプロセスやひとつの正解があるわけではないが、道に迷ったときの拠り所となる地図は必要である。本稿では、変革ジャーニーの歩き方と、立ちはだかる障壁を克服するための要点を示す。
多くの企業が企業変革の過程で直面する共通の課題に着目し、ITRでは典型的な変革の推進プロセスと、立ちはだかる障壁への対応策を「変革ジャーニーマップ」として示した(図1)。企業のさまざまな変革プログラムに全て当てはまるわけではないが、航海に出る際に海図を携えておくことは心強いはずだ。また、ここで示した変革ジャーニーの流れは、旅程通りに進むとは限らない。同じプロセスを何度も繰り返さなければならないこともあれば、一度引き返して違う道を探さなければならない場合もある。
自社が変革に取り組む際には、この変革ジャーニーマップを参考にしつつ、自社の状況に合わせて具体的な施策を盛り込みながら自社版の変革ジャーニーマップを策定することが推奨される。変革への取り組みに終わりはなく、また、同様の障壁に何度となく遭遇することもあろう。その際に、以前の取り組みを振り返り、同じ過ちを繰り返さないためにも役立つであろう。ここからは、変革ジャーニーマップに示したフェーズごとに、実施すべき事項と、障壁に対する対応策を紹介する。