長引くコロナ禍で在宅勤務が定着するなか、孤立感を覚える従業員が増加している。Web会議などによって当面の連絡手段は確保できていても、物理オフィスならではの「場の共有」の機会が失われることへの危惧は根強い。こうした課題を解決するためのツールとして注目されているのが“仮想オフィス”である。本稿では、仮想オフィスの特徴や機能を紹介するとともに、導入に際しての留意点について解説する。
コロナ禍の影響で、企業のテレワーク導入は一気に進んだ。今後、コロナ禍が収束しても、テレワークという就労形態は一定の割合で定着すると見ている。しかしその一方で、従業員が一堂に会する機会が失われたことで、組織としての一体感やコミュニケーションに支障が出る事態も発生している。ITRが2020年7月に実施した調査において、テレワーク採用企業の担当者に「思うようにできなくなったこと」を問うたところ、高い割合を示した回答のひとつが「社員間のフランクな雑談」であった。
テレワーク環境において、従来行われてきたオフィス内コミュニケーションは、複数のITツールによってデジタル化されている(図1)。
Web会議やメール/チャット、ポータルといったツールを利用すれば、確かに、業務に必要な連絡や情報共有は過不足なく行うことができるだろう。ただし、図1に示す右上の領域、すなわち、同期的でかつオープンにやり取りされる「声かけ」「あいさつ」「雑談」「つぶやき」「相談」といったコミュニケーションをデジタル環境で再現するのは必ずしも容易ではない。こうした、業務として組み込まれていないが人間関係やチームワークを円滑化するためのコミュニケーションが減少することで、チームとしての目標の共有や作業効率の維持、若手社員に対する教育などの面で支障を来すと考えられる。ひいては、組織に対する帰属意識やロイヤルティの低下といった事態が生じることも懸念される。
こうした課題を解決するためのツールとして、今日、一部の企業の間で注目されているのが、仮想オフィスである。