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【R-221101_6962635177】急務となる物流DX

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 19, 2023 4:18:53 AM

物流システムは、戦争における兵站の研究であるロジスティクスから進化してきたが、今大きな変革にさらされている。企業は、物流に内在する課題やリスクを踏まえて、企業・グループの枠を越えたシステム利用についての取り組みをこれまで以上に推進していく必要があり、物流DXに向けた戦略を再考すべきである。

コロナ禍で顕在化した物流リスク

コロナ禍により出勤や移動が減少していることから、それらの行動に伴う購買に関連する産業やマーケットが大きく減少する一方、生活必需品や食品などの需要が増大している。それに伴い、インターネットによるモノやサービスのEC購買も大きく成長している。こうした生活・経済環境の急速な変化は、一過性ではなく今後も変動し続けると見るべきであり、大量・小頻度・大口配送の効率のよい輸送から、消費者・需要者向けの少量・多頻度・小口配送が、これまで以上に求められるようになるだろう。需要の多様化に伴う少量多品種への流れは、いずれの先進工業国も遭遇する課題であるが、コロナ禍による需要構造や動態の変化は、物流のあり方を大きく、かつ難易度が高い方向に急速にシフトさせる契機となったことは確かといえよう。それと同時に、長年山積みしてきた物流リスクや中長期的な課題が顕在化したとITRでは見ている。

国土交通省が公表する『第3回2020年代の総合物流施策大綱に関する有識者検討会(2020年9月17日)』の資料3『物流を支える大型車の現状と今後』によれば、2018年度の国内貨物の91.6%(トンベース)がトラック輸送に依存している。つまり、国内における物流の課題やリスクには、ほぼトラック物流が関係するといっても過言ではない。トラック運送事業は典型的な労働集約型の産業であり、長時間労働で賃金が安いといったことから、ドライバーの労働力不足の常態化が長年指摘されてきた。今後、少子高齢化が進むなか、抜本的な対策を講じなければ、労働力不足が物流コストに転嫁されることは想像に難くない。半導体不足などの国際物流、調達物流におけるグローバルの広域リスクも含め、企業は中長期的に物流リスクを再考する必要があるだろう。