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【R-221082_6962618708】SAP導入企業が見据えるべき今後の方針

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 15, 2023 3:09:28 PM

SAP Business Technology Platformの発表以降、SAP社は矢継ぎ早に新たな戦略やソリューションを発表している。その中核となっているのがクラウドERPであり、S/4HANAだけでなくSAPのクラウドソリューションの機能拡張やシステム連携を一元的に管理・開発できる選択肢を企業に提供する狙いである。SAP ERPを導入している企業は、SAP社の新たな戦略や方向性を熟慮したうえで今後の方針を決定すべきである。

経営陣の交代とSAPのビジネス状況

SAP ERPの後継として、2015年2月3日発表されたSAP Business Suite 4 SAP HANA(S/4HANA)であるが、2021年3月9日、SAPジャパンは、S/4HANAのグローバルにおける導入顧客が1万6,000を超え、うち半数以上の8,500が本番稼働中であると発表した。これらの数字の単位は、Customer数と発表しているため、導入システム数やサイト数といった物理的な単位ではなく、契約社数と見てよいだろう。さらに、SAP社CEOのChristian Klein氏は、2021年第1四半期(1〜3月期)の決算発表の質疑応答において、4,800社が新規にSAPを導入した顧客であったとも述べている。S/4HANAの発表からすでに6年が経過して、2020年2月4日にはSAP ERP 6.0などの保守期限を2025年から2027年まで延長するなど、ここまでの足取りは必ずしも順調とはいえなかった。企業は、コロナ禍による影響を受けつつも、SAPの新製品をようやく受け入れる準備が整いつつあるかのように思える。

ここまでのSAP社の経営も、短期間にCEOが交代するなど平坦とはいえない側面があった。2019年10月10日、約10年間CEOの任にあったBill McDermott氏の退任とともに、Jennifer Morgan氏とChristian Klein氏の共同CEO体制へと移行することが発表された。Jennifer Morgan氏が、Qualtrics、SAP SuccessFactors、SAP Ariba、SAP Concurといった買収製品を中心とするクラウド分野を担当し、Cristian Klein氏がSAPビジネスの中核であるERPを分担していた。しかし、この共同CEO体制は実質半年程度、2回の四半期業績発表を実施したのみで解消されることとなった。2020年4月20日、Jennifer Morgan氏が2020年4月30日付けで退任し、Christian Klein氏の単独CEO体制に移行すると発表したからである。SAP社の取締役会は、この短期間の体制変更を当初からの予定であったとするものの、文字通り受け止めることへの疑問も少なくなかった。