コロナ禍による最初の緊急事態宣言の発出から1年が経過したが、依然として新規感染者の拡大は抑えられておらず、本稿の執筆時にも、政府は東京や大阪などで企業に再びテレワークにより出勤者7割削減を要請している。本稿では、テレワークにおけるPC利用環境や課題に関する調査結果を踏まえ、VPNからクラウド・ゲートウェイ・セキュリティへの移行について考察する。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大はワークスタイルの変化をもたらし、多くの企業において在宅勤務が実施されることとなった。ITRがテレワークを実施している企業(従業員50名以上)を対象に実施した『コロナ禍に伴うテレワーク実態調査』(2020年7月実施)では、コロナ禍以前には、テレワークの実施は従業員の10%未満にとどまるとした企業が全体の半数を占めた。
テレワーク実施企業においてコロナ禍以後、利用している主なPCデバイスについて尋ねた。その結果、最も多かった回答は「オフィス用に支給しているPCを持ち出して利用してもらう」(36%)であり、「テレワーク専用のPCを貸与する」(28%)がこれに続き、コロナ禍以前とほぼ同じ割合となった(図1)。一方、コロナ禍以前から最も増加したのは、「個人所有のPCを利用してもらう」であり、全体の約2割に拡大した。
続いて、業務アプリケーションなどの利用におけるデスクトップ環境について尋ねた結果を見る。いわゆるファットPCに該当する「PCに搭載されているデスクトップ環境をそのまま利用」が最も多く約半数に達した(図2)。これに続いて、「VDI、DaaSにより、サーバまたはクラウド上の仮想デスクトップ環境を利用」が4割、「リモートデスクトップにより、オフィス内PCのデスクトップ環境を利用」も4割弱となった。これら仮想デスクトップまたはリモートデスクトップ環境のいずれか、またはその両方を利用している企業は全体の6割強に達しており、テレワーク時のセキュリティを念頭に置いていると想定される。ファットPCを選択した企業のうち、3割が仮想デスクトップ環境も、5割がリモートデスクトップ環境も選択しており、テレワーク時は、複数のデスクトップ環境が混在して利用されていることがわかった。