DXの本質は「デジタルが高度に浸透する社会に適合するよう、企業が丸ごと生まれ変わる」ことであり、個別のプロジェクトが完遂できれば終わりというわけではない。またDXは、実践部分だけなく、さまざまな環境整備を伴う長期的かつ抜本的な企業変革の営みであり、これを円滑に推進するためには組織カルチャーや全従業員の意識変革が不可欠であることから、「変革のマネジメント」が重要な役割を果たす。
プロジェクトを遂行するためにプロジェクト管理が必要であることは広く認知されているが、変革を推進する際に、変革のマネジメント、すなわちチェンジマネジメントが重要であることは、あまり認識されていない。不確実性の時代といわれる今日において、グローバル競争の激化、テクノロジの急速な進展、顧客ニーズの多様化などにより、企業は常に変革を迫られており、変化し続けられなければ生き残っていくことはできない。
一方、DXに限らず、企業が取り組むさまざまな変革プロジェクトの成功率は決して高くない。失敗の原因の多くは、従業員の反発、改革意識の欠如、従来のやり方への固執など、「変化に対する人の抵抗」に関連していると考えられる。チェンジマネジメントは、このような「人の抵抗」という課題に向き合うために生まれたといわれている。日本チェンジマネジメント協会では、チェンジマネジメントとは「人が変化を受け入れ、新しい状態にいち早く移行できるように支援する手法であり、チェンジマネジメントを適切に行うことにより、変革プロジェクトの成功率をあげることができる」と述べている。つまり、プロジェクト管理では品質・コスト・納期の管理に焦点があてられているが、チェンジマネジメントでは人に焦点があてられる。