コロナ禍で急速に普及した在宅勤務は、生産性・効率性の向上など一定のメリットが実感されたことで、アフターコロナにおいても定着するであろう。一方で、在宅勤務環境のデメリットとして取り上げられるのがコミュニケーションの減少である。短期的にはオンライン会議やビジネスチャットなどで補完できようが、業務の属人性を回避し長期の業務継承としての対策が必要である。本稿では、在宅勤務環境での業務継承を支援するマニュアルとその作成効率化について考察を行う。
新型コロナウイルス感染拡大防止の対策として普及した在宅勤務は、今後コロナ禍が収束する方向に進んでも、多くの企業が業務の生産性・効率性の向上を実感したことで継続されるであろう。この在宅勤務での業務において問題となるのがコミュニケーションの減少である。業務上の指示や情報共有は、オンライン会議やビジネスチャットなどのITツールを採用して補うことができる。しかし、業務が正しい手順通りに行われているかなどの統制面の支障はないだろうか。ITRでは『コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査』(2020年4月調査)において、新型コロナウイルス感染防止対策に伴うIT部門における業務で支障について問うた。「支障はない」という回答が全体の約3割となり、約7割は何らかの支障があったことがわかった(図1)。本稿のテーマである業務継承の観点からは「指揮命令が行き届かず、作業漏れやミスなどのトラブルが発生した」といった統制面での問題といえる事象にも一定の回答があった。支障があったとする回答者の勤務環境別での内訳を見ると、両方を行っている(在宅中心/オフィス中心)、のいずれかの在宅勤務環境にある回答者の割合が、ほぼオフィス勤務の割合よりも高いという結果であった。このことから、在宅勤務においては、正しい手順で業務を遂行し、何らかの支障があった際にはその手順を確認できる手段を準備しておくことが重要であるといえよう。
都度の業務指示や作業上の相談が困難な在宅勤務環境では、あらかじめ業務手順とルールを決め、作業に関するマニュアルを準備しておくことが望ましい。しかしマニュアルを作成するには、業務に関する知見やルールを理解している必要があり、しかもその作成には多大な労力がかかることが想定されるため、進め方などの方針を定め、少ない工数で効率的に作成することが重要と考える。