DXの本質は「デジタルが高度に浸透する社会に適応した企業に丸ごと生まれ変わらせる」ことにある。よって企業の経営者は、DXをIT課題ではなく経営課題と捉えなければならない。DXを円滑に推進するためには、組織や制度の改革に加えて、組織カルチャーや全従業員の意識変革が必要となり、それには経営者のメッセージや行動が特に重要な役割を果たす。
DXを「それはIT業界やネット企業の世界の話だ」「自社の業界とは無縁だ」と対岸の火事と捉える企業経営者が少なくない。しかし、デジタルの波はあらゆる業界に押し寄せており、もはやその勢いを止めることも、逆行させることもできない。まずは、今起こっていること、そしてこれから起ころうとしていることに正面から向き合い、DXの本質的な意味を正しく理解しなければならない。DXを円滑に推進するためには、多岐にわたる組織や制度の改革に加えて、組織カルチャーや全従業員の意識変革が必要となる。「DX推進で大企業が陥りやすい5つの罠」（ITR Review 2019年11月号、#R-219114）で警鐘を鳴らした「後はよろしく罠」や「過去の常識の罠」に陥らないためには、DXに向けた経営者の意識や行動様式の変革が求められる。本稿では、DXに求められる経営者の5つの行動を示唆する（図1）。