国内ではあまり認知されていないIBP(Integrated Business Planning)が、コロナ禍を契機に改めて注目されるだろう。包括的な意思決定をできるだけデジタル空間で完結させるとともに、プロセスを自動化・高度化することは、不確実性が高い時代を乗り越えるうえで重要となる。また、オープンな意思決定を醸成するための基盤としてもIBPは欠かせない取り組みとなろう。
デジタル化が進展していくにつれ、製品やサービスに関わるオペレーションがデジタルを前提とした業務プロセスで運営される比重が高くなっていくことは自明である。そうなると、いつでもどこでもどのような状況でもデジタル空間で的確な意思決定ができるような、計画系システムへと高度化することも必然となっていく。企業として活動する以上、株主/投資家/従業員などのステークホルダーに対する説明責任が求められることに変わりはなく、主戦場とする空間が変わってもその変化に対応していかなければならない。今後どのくらい収益を見込むのか、どのくらいの期間で投資を回収できるのか、あるいはいつまで先行投資を続けるのかといった羅針盤を持たない組織は、主義や制度を問わずビジネス活動への参加資格を欠いているといっても過言ではないだろう。
経営・事業・オペレーションの各レイヤでビジネスをプランニング(計画策定から実績管理およびフィードバックに至る一連のマネジメント)することは、デジタルビジネスの探求においても、既存ビジネスをデジタルで漸進・高度化するうえでも基本となる。さらに、2020年初頭にはコロナ禍による経済恐慌といってもよいダウントレンドを誰も予測できなかったように、不確実性の高い経営環境を前提とした備えもより必要性が高まるであろう。こうした不確実性を象徴するキーワードにVUCA(Volatility:変動性、Uncertainly:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)がある。意思決定をデジタル世界で完結するためにプランニングをできるだけ自動化することは、オフィスか在宅かを問わずビジネスを継続しつつ、不確実性に対応するうえでも重要である。さらに、消費税や法人税の税制・税率変更や政府支援など、景気・雇用・需要に対する対策が発動され得る状況やシナリオの変更にも対応できるよう、プランニングを高度化していかねばならないだろう。