国内のRDBMS市場は、データの海外移転の問題からクラウドシフトが遅れ、ビッグデータ利活用の分野でもRDBMSはNoSQLデータベースの後塵を拝してきた。しかし最近になって、これらの状況に変化が表れてきた。本稿では、RDBMS市場の最新動向として、クラウドシフトの進展とビッグデータ需要の取り込みの2点について解説する。
ITRが行ったRDBMS市場の最新調査を見ると、パッケージとSaaSに分類した提供形態別の売上金額は図1のように推移している。
これによると、SaaSの占める割合が、2017年度の6.5%から、2019年度(予測)には13.6%へと倍増しており、クラウドシフトが進んでいることがわかる。また、この調査では、顧客がライセンス購入した製品をパブリッククラウドのIaaS上で使用する形態は、SaaSではなくパッケージに分類し算出しているため、パブリッククラウド環境全体におけるRDBMSの利用比率は、これよりもさらに高い値になると推測される。
この動きは、DWH(データウェアハウス)用DBMS市場ではより顕著に見られ、SaaSが占める割合は、2019年度(予測)で85.1%まで増加する(図2)。
この傾向はIT市場全般に見られるクラウドシフトの流れに沿っているだけではなく、主要なクラウド事業者が相次いで国内にデータセンターを開設したことで、重要なデータを含むデータベースを海外移転することなく、国内で運用することが可能になったこともひとつの要因であると考えられる。例えば、Oracle社の場合、国内初のデータセンターを2019年5月に東京に開設したが、早くも2020年2月に大阪の第2のデータセンターを開設し、日本国内でのDR(ディザスタリカバリ)構成を可能にした。
これまでRDBMS市場のクラウドシフトを阻害していた最大の要因であったデータの海外移転が不要になったことで、今後は国内企業においても急速にクラウドシフトが進むと予測する。