ITRでは、2020年1月から2020年3月にかけて国内ERP市場の市場規模と動向を調査した。本稿では、同調査結果をまとめた「ITR Market View:ERP市場2020」から、国内ERP市場の概況を述べるとともに注目すべき動向について示唆する。また、2020年以降に想定されるベンダーおよび製品の戦略や今後の方向性を想定しつつ、企業が重視すべきポイントを概説する。
ITRでは2008年以降毎年国内ERP市場を調査しており、最新の調査結果は「ITR Market View:ERP市場2020」として発刊する。同調査では、48ベンダー、91製品を対象に売上げや製品動向を調査しており、前年調査の対象数からの推移は以下の通りである(図1)。
製品数は、個別に売上げの実績を調査した単位の数であるが、実際にベンダーが販売している製品の単位とは異なる場合もある。例えば、用途別、産業別、企業規模別などで複数のシリーズやバージョンを持つ製品の場合、シリーズ一括で売上げを確認している場合がある。また、会計、人事・給与といった業務分野別モジュールの売上げを集約している場合もある。こうした判断はケース・バイ・ケースで行うが、基本的にはITRの取材に対してベンダーが詳細な情報を公開できず、正確性や妥当性が判断できない場合はグロスでの売上げを調査している。
図1の通り、新たに市場に投入される製品はSaaS製品が増えてきており、従来オンプレミスのパッケージのみを提供していたベンダーがSaaS版を出荷し売上実績が確認できた場合もあれば、海外SaaS専業ベンダーが国内市場に新規参入した場合もある。そこで、今回の調査対象から、SaaS専業ベンダーの製品およびパッケージ専業ベンダーの製品をそれぞれ抽出した(図2、図3)。パッケージとSaaSを併売するベンダーは図2または図3のいずれにも含んでいない。