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【R-220044_6963144782】未来テクノロジの見分け方(後編)

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 19, 2023 1:49:31 PM

前編で、未来予測は非常に困難であること、そしてテクノロジには必ずライフサイクルが存在することを解説した。後編では、これらを理解したうえで、有望なテクノロジをいかに見分け、未来テクノロジへの調査/評価活動を企業が主体的に実践することの意義を述べる。

有望なテクノロジの見分け方

未来のテクノロジを高い精度で予測することは困難であるとITR Review 2020年3月号「未来テクノロジの見分け方(前編)」(#R-220031)で述べた。しかし、だからといって自社では能動的な行動を何ら起こさずに、先進テクノロジを創成したり、いち早く活用する企業を傍観するだけでいいはずもない。未来テクノロジの正確な予測は困難でも、将来有望なテクノロジは何かを見分けることは可能である。そのポイントを図1に示した。

図1.将来有望なテクノロジの見分け方

出典:ITR

いくら革新的なテクノロジでも、1社だけの提供であれば将来性は低い。過去に成功した先進テクノロジの多くは対抗馬が存在した。古くはビデオテープ規格のVHSとベータである。近年では、iOSとAndroidもその代表格である。対抗テクノロジが存在すれば、双方のテクノロジそのものの進化やエコシステムの拡大に心血を注ぐため、市場での存在感が増す。

対抗する複数のテクノロジには「強い」ものと「弱い」ものが存在することが多い。「強い」ための条件はさまざまであるが、スケーラビリティやオープン性などがあげられる。例えば、ハードウェア製品の内部構造やソフトウェアのコードがオープンなものとクローズドなものでは、前者のほうがエコシステムを形成しやすいため「強い」といえる。

同じ機能を実現する製品で「ソフトウェア」と「ハードウェア」がある場合、ハードウェアには物理的な制約が多いためソフトウェアのほうに未来があると考えられる。いくら優れたテクノロジであってもネットワークにおけるEthernetのように、適用する領域ですでに普及しているインフラと互換性がないものが未来を創るのは難しい。

テクノロジには2種類あり、利用方法や適用領域などが予想不能な革新的なテクノロジと、長年の課題に対する解決策としての新規テクノロジに分けられる。前者は時間をかけて進化や改良が施され後者に変貌する。または変貌できない可能性もある。そのため、長年の課題に対する解決策としての新規テクノロジのほうが有望性が高いと考えるべきである。

一度忘れられたテクノロジが復刻することも多い。その背景には、専門の研究者やエンジニアが長年かけて進化や改良を行った努力があるのだが、一般の利用者からは復刻したように見える。こうしたテクノロジを「過去の失敗に学ばない愚かな挑戦」と捉えるか、「実用の可能性が高まったテクノロジ」と捉えるかでは雲泥の差がある。例えばAIを「過去の失敗に学ばない愚かな挑戦」と評価する人はいないだろう。