ビジネスにおいて先進的テクノロジの有効活用は他社との差別化を図るうえで極めて重要なテーマである。先進的テクノロジがいつ頃有効に利用できるようになるのかを予測することは非常に難しく、自社の過去を振り返れば多数の失敗経験を持つ企業も多いだろう。前編では、未来予測がいかに困難であるかとテクノロジのライフサイクルについて解説し、後編では未来テクノロジに関する調査/評価活動を行うことの重要性について述べる。
先進的テクノロジがビジネスイノベーションや他社との差別化に極めて重要な時代となっている。テクノロジを見極める力とその活用能力が企業の今後を左右するといっても過言ではない。では、未来にどのようなテクノロジが台頭していくのかを予測することは可能であろうか。
図1に、これまでの未来予測の失敗例を示した。古代の最も偉大な土木建設のひとつといわれ、2,000年以上経過した現代でも利用されているローマ水道を設計したセクストゥス・ユリウス・フロンティヌスは紀元1世紀後半に「発明は限界に来ている。私は今後大きな変化はないと考えている」と述べた。Bank Michiganの頭取だったC.T.ブリッジマン氏は、フォード自動車の初期投資家の1人で後にヘンリー・フォード氏の弁護士になったホレス・ロックハム氏に「自動車は一時のブームに過ぎない。今後も馬が主流だ」と1903年に助言した。しかし、ロックハム氏はその言葉を無視して車に投資した結果、億万長者となった。
大手映画製作会社のひとつであるWarner Bros.社の創設者H.M.ワーナー氏は、従来の無声映画を音声付きに変えた技術「トーキー」がすでに世の中に登場していた1927年において「いったい誰が映画で俳優が話すのを聞きたいんだ?」「無声映画はどんな外国語にも簡単に対応できるのだ」などと述べている。しかし、トーキー映画は世界的な人気となり、そのおかげでWarner Bros.社は大きく売上げを伸ばした。ノーベル賞受賞経済学者であるポール・クルーグマン氏は1998年に「インターネットの経済インパクトが越えないことが2005年までには明らかになるだろう」と述べた。しかし、この予測はまったく的外れであったことは誰も目にも明らかであろう。