企業のIT環境において、コスト抑制やライフサイクルの延長を目的に、第三者保守を活用する動きが強まっている。本稿では、サーバ/ストレージ/ネットワーク機器といったハードウェアに焦点をあてて、第三者保守の市場動向、ならびに期待される効果や留意点について述べる。
第三者保守とは、メーカーではないサードパーティ(第三者)が独自に当該製品の保守を提供するサービスである。ITシステムのハードウェアにおいては、対象機器メーカー以外のハードウェアベンダーやSI事業者などから第三者保守が提供されている。これは、いわゆるリセラーが単にメーカー保守の契約やデリバリの中継ぎを行うのとは異なり、事業者が自社のビジネスドメインに基づいて独自性の高い保守プログラムを提供する点がポイントとなる。サードパーティ事業者は、自社が取り扱うハードウェア機器を対象に、競争力のあるサービス内容、サービスレベル、価格を設定することで、差別化を図ることができる。
サードパーティによる保守サービスは、メインフレーム時代から存在したが、「第三者保守」という用語が今日のように市場に浸透したのは、2013年頃にパッケージ・ソフトウェアを対象に第三者保守を手掛ける事業者(Rimini Street社など)が出現したことによる。当時から、ITシステムの維持コストを圧迫する保守費用の高さは、CIOやITインフラ責任者にとって慢性的な課題となっており、第三者保守サービスの台頭は硬直化/高止まりした保守費用を切り崩すソリューションとして、過剰ともいえる大きな期待感を持って市場に受け止められた。以来、第三者保守への関心は、一部の業務アプリケーション、DBMS、ハードウェア(サーバ/ストレージ/ネットワーク機器)などの領域に広がり、すでに利用していたり、具体的な利用に向けた検討に取り掛かったりする企業は増加しつつある。経済産業省は、「DXレポート」で示した「2025年の崖」のコンセプトにおいて保守運用コストの増大に警鐘を鳴らしているが、このこともIT市場における第三者保守の関心度の高まりに拍車をかけている。