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【R-219055_6962946591】ITインフラに向けた投資の効果評価

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 21, 2023 6:49:09 AM

ITインフラはビジネス遂行に不可欠であり、断続的に一定規模の投資が要求されるが明確な投資効果を描くのが難しく、多くの企業では投資の根拠の説明に苦慮している。本稿では、この課題解決の一助として、ITインフラに関わる投資評価を行ううえでの考え方と設定しうるKPIの例を紹介する。

ITインフラ投資の特性

IT部門のインフラチームにおいて、投資案件の上申・稟議は、悩ましいタスクのひとつである。全社的な投資案件(設備投資、資本参入など)の意思決定プロセスについては、ほとんどの企業が明文化した規定やガイドラインを備えている。しかし、それらは必ずしもIT投資案件を対象としておらず、適切な投資評価を実施できないことも多い(情報セキュリティ投資の妥当性評価ができないなど)。Eコマースや金融といったIT依存度の高い業種ならともかく、メーカーなどの装置産業においては設備投資額に比べてIT予算額が小さいことから、IT投資はさほど重要でないと見る向きもある。こうした背景から、適切なIT投資マネジメントを実践するうえでは、投資評価や意思決定に関わるルールを自主的に規定しておくことが不可欠である。全社的な投資マネジメント規定の下位規定として、あるいは独立して、IT部門が主体となってIT投資マネジメント規定を策定・運用することが求められる。

投資効果を表現する手法には、定量効果と定性効果があるが、定量効果に重きをおくべきであることはいうまでもないだろう。ここで、定量効果を経済的価値の観点で表したのがROIである。投資は、リターン(利益)を期待して資金を投下する行為であり、将来的に何らかの経済的価値を得ることを目的とする。プロジェクトやプログラム(ここでは、継続的な成果をもたらす持続的な活動をいう)の総費用が大きい案件や、多額のキャッシュアウトを伴う案件は、より上位組織の管理対象となり、経済的価値については常に論点となる。しかし、いかなる案件であっても事前に正確なROIを推し量るのはおおよそ不可能であり、予測値と実績値がかけ離れる結果となることも珍しくない。さらには、現実的にROIを推定すること自体ができないといった案件も少なくない。SFAやWebマーケティングの導入といった売上拡大を目的とした案件や、RPAによる自動化といったコスト削減を目的とした案件においては、何らかのかたちでROIを試算することはできるだろう。しかし、ネットワーク機器のリプレースやセキュリティ対策の強化といったITインフラに関わる案件の多くは、目に見える経済的なリターンを得られるものではないため、ROIを算定できないといった事態が起こりうる。これが、投資評価においてインフラチームを悩ませる大きな要因である。