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【R-219044_6963091609】商用RDBMSからOSSへ移行する際の留意点

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 21, 2023 7:27:09 AM

近年、利用中の商用RDBMSをOSSのRDBMS(以下、OSS-RDBMS)に置き換えることを検討する企業が増えている。その主な目的は、商用RDBMSの高額なライセンスや保守費用の削減にあるが、表面上の費用の削減のみで移行を判断するのは早計である。本稿では、OSS-RDBMSへの移行を検討する際の最低限押さえておくべきポイントとして、「コミュニティ版とコマーシャル版の選択」「機能面」「性能面」「周辺ツールとの接続性」の4項目をあげ、それぞれについて解説する。

コミュニティ版とコマーシャル版の選択

RDBMSに限らず、OSSには、コミュニティから無償で提供されるコミュニティ版と、コミュニティ版をベースに機能強化などを行ったうえでベンダーから提供されるコマーシャル版の2種類が存在する。

コミュニティ版を採用する場合は、ソフトウェアライセンスは無償であるが、商用のソフトウェア製品にあるようなサポートは提供されず、原則的にユーザー自身によるメンテナンスが必要となる。このサポートレベルを他の商用ソフトウェアと同等のレベルに引き上げるには、サービスベンダーが提供する有償のOSSサポートサービスを利用する方法がある。

代表的なOSS-RDBMSにはPostgreSQLとMySQLがあるが、PostgreSQLに関しては「PostgreSQL エンタープライズ・コンソーシアム」のWebサイトに有償サポートサービスを提供している同コンソーシアムの正会員ベンダーの一覧が掲載されている(https://www.pgecons.org/postgresql-info/services/)ので参考にされたい。

一方、OSS-RDBMSのコマーシャル版を選択した場合は、商用製品と同様にライセンスと保守費用が発生するが、多くの場合は、商用RDBMSに比べて低額になる。しかし、既存システムからの移行の場合、互換性の程度に応じてSQLプログラムなどの変更費用が発生するため、トータルコストでは割高となる場合もあるので注意が必要である。互換性の確認については、後述の「機能面」の項目で説明する。

以上のように、一言でOSSといっても選択肢はひとつではなく、コミュニティ版とコマーシャル版のいずれを採用するか、コミュニティ版の場合はどのサービスベンダーの有償サービスを組み合わせるか(あるいは保守を内製するか)、コマーシャル版の場合はどのベンダーの製品を採用するか、という多様な選択肢の中で評価を行う必要がある(図1)。

図1.OSS-RDBMSのコミュニティ版とコマーシャル版の選択

出典:ITR