2018年6月、経済産業省より企業の戦略的IT利活用の促進に向けた取り組みの一環として「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」が公表された。本稿ではこのガイドラインのAI編における主要な要点を紹介し、AI技術を利用したソフトウェアの開発・利用をめぐる契約の基本的な考え方と、探索的段階型の開発方式の考察を行う。
デジタルビジネス創出の必要性が叫ばれ、デジタル技術の活用を目指すプロジェクトの推進が多く聞かれるようになってきている。こうしたなか、2018年6月15日に経済産業省により「AI・データの利用に関する契約ガイドライン（以下、「ガイドライン」）」が公表された。
ガイドラインは、AI編とデータ編で構成され、いずれも当事者が契約で定めておくべき事項などを示している。多くの企業間でAI技術とデータに関する認識や理解にギャップが生じているために契約の締結が進まないという課題がある状況下で、このガイドラインが公表された意義は大きく、AI関連のプロジェクトに携わるあらゆる立場で把握すべき内容である。
本稿ではこのガイドラインのAI編（以下、「AI編」）」について理解を深めるために主要な要点を取り上げるとともに、ITRが推奨する施策について提言する。なお、本稿においては、用語の定義はガイドラインでの定義に従うものとする。特に、「AI」は機械学習の範囲に定め、「AI技術」は機械学習に関連するソフトウェア技術とするを指すものとしている点に留意されたい。