政府による「働き方改革」の推進や「高度プロフェッショナル制度」などの関連法案の可決を受けて、従業員の就業形態はますます多様化が進むと見られる。企業における人材の雇用・再雇用、育成、成果・目標管理のあり方も、大きな変革を迫られていくだろう。多くの企業が働き方改革やワークスタイル変革を重要なIT戦略テーマに掲げている現状にあって、人事系システムに対する刷新や強化に関する大企業の動向を確認する。
2018年6月29日、「働き方改革関連法案」が参議院でも可決された。同法案には、高度な専門知識を有し一定水準以上の年収を得る労働者が、脱時間給の自由な働き方により成果を問われる「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」の新設などが含まれている。高度プロフェッショナル制度は、対象となる業務や年収が限定されているとはいえ、労働時間による対価ではなく、あくまで労働の質・成果によって報酬を定めることを可能にしている点が、従来の裁量労働制と基本的に異なる。実際に高度プロフェッショナル制度を自社の従業員に適用するにあたっては、政府省令で今後規定される具体的な要件に応じて慎重に検討していくべきであり、従来の評価制度や健康管理レベルの見直しも避けられない。
少子高齢化が進み恒常的な人手不足に悩まされる企業にとって、自社の競争力や国際競争力を高めていくための機会として活用できる側面もある一方で、これまでの人事・労務制度のあり方が改めて問われることにもなるだろう。また、働き方の変化に伴い、人事系システムに関するシステム化方針を再検討する契機ともなっていくだろう。