IoTはもとよりAI、ロボット、AR/VR、ビッグデータ分析などのスマートテクノロジというべき革新的技術を駆使した近未来のビジネスが数多く台頭している。これらのビジネス機会は、従来型のビジネスモデルや市場構図を一新させる可能性を秘めている。企業は自社業界に固執せず広い視野からビジネス市場の動向を把握すると同時に、自社の関わり方を明確化することが求められる。
今日の企業において、IoTの導入目的は業務効率の向上から新商品開発に至るまで幅広く存在し、適用分野も多岐に及ぶ(ITR Review 2018年2月号「国内市場におけるIoT推進の現状」#R-218022)。IoT市場はすでに一定の市場規模を形成しているが、それでもなお現在は成長の初期段階にあると見られ、関連技術の多くは成熟途上にある。そのため、企業がIoTテクノロジを基軸に業務改善やビジネスイノベーションを起案する時、実際のユースケースやベンダー/サプライヤーの推奨ソリューションといった限られた情報をもとに検討が進められる。限られた情報といっても、これらは実践的かつ現実的なことが多く、競合の動向を把握できるなど示唆や気付きを得られることも少なくない。しかし、その反面、検討のスコープが断片的あるいは局所的なものになりやすく、本来、あるべき姿を検討するうえで必要な観点を幅広く網羅できるかというと疑問が残る。このことは、IoTに限らず、AI、ロボット、AR/VR(拡張現実、仮想現実)、ビッグデータ分析といった産業界における標準的なビジネス手法や市場構図を塗り替える可能性のある革新的な技術においても当てはまる。本稿では、こうした技術を総じてスマートテクノロジと称する。
従来の技術ではなく、スマートテクノロジを基軸とするビジネスデザインを行う企業がイノベーターとして強い影響力を持つようになれば、これまでのビジネス上の通念や産業の定義を塗り替えるインパクトを与えることがある。EV(電気自動車)を専門とするTesla社が台頭した時、主流はガソリン車で自動車メーカーの多くはハイブリッド車の開発に注力していた。しかし、今や英国、フランスをはじめ多くの国が2030年から2040年にかけてガソリン/ディーゼル車の撤廃を宣言している。同社はテレマティクス保険の提供も開始しており、自動車メーカーと保険会社がそれぞれ別個に存在する産業界の構図も塗り替えようとしている。企業は、スマートテクノロジが持つ潜在的な影響力をビジネス視点から評価すべきである。そして、産業界におけるビジネスモデルの世代交代を見据えて、自社の関わり方を明確化すべきである。