働き方改革の推進によって従業員がいつでもどこでも働ける仕組みや制度が整う一方で、組織としての一体感や共通前提が失われることに危惧を抱く声も少なくない。そうしたなかで、組織文化を共有するための手段として改めて注目されているのが目標管理である。本稿では、成長企業を中心に採用が進んでいる「OKR(Objective and Key Result)」を取り上げつつ、これからの目標管理のあり方を考察する。
「働き方改革」の号令の下、近年、企業でテレワーク制度の採用が急ピッチで進んでいる。ITRが2017年7月、国内企業に勤務する従業者2万人以上を対象に調査したところ、テレワーク制度を導入している企業の割合は12%で、前年調査の結果(9%)から増加した。
自宅やサテライト・オフィスなど離れた場所で業務を行えるテレワークは、働き方改革の象徴ともいえる取り組みであり、実施者に対するアンケート調査でも、その効果についてはポジティブな回答が多く寄せられている。しかしながらその一方で、「顔が見えない働き方」が常態化することに対しては不安を抱く向きも少なくない。2017年9月に実施した調査では、同僚や上司・部下など周囲の人がテレワークを行う際の不安として、「組織・チームとしての一体感の低下」をあげた人が約60%に上った。大部屋で顔を見合わせながらチームとして活動することに慣れ親しんできた国内企業ならではの課題認識といえる。では、そうした企業が、組織としての一体感を失わずに柔軟な働き方にシフトするために、何をすべきなのであろうか。ITRでは、そのひとつの打開策として目標管理の見直しが有効であると考えている。
目標管理とは、組織の目的に沿った成果をあげるために個々の従業員が自らの目標を設定し、定期的にその達成度を評価する仕組みの総称である。すでに何らかの制度を採用している企業も多いが、一般的には人事評価の手段として利用されており、組織的なパフォーマンスやモチベーションの向上には十分に結び付いていないことが多い。また、一度設定した目標が日々の業務の中に組み込まれにくく、制度そのものが形骸化している企業もまま見受けられる。