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【R-218014_6963096873】イノベーションの発想の起点

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 23, 2023 2:01:12 AM

デジタル産業革命が進行する現在、これまでの延長線上の戦略だけでは、成長ばかりか生き残りも困難な時代となっている。企業は、イノベーションを創出していくことが期待されるが、そのためには未来志向の課題設定と大胆な発想の転換が求められる。

求められる発想の起点の転換

ITやデジタル技術を活用したビジネスイノベーションや新規ビジネスの創出への取り組みが期待されているが、最新のテクノロジを活用するだけでイノベーションが創出できるわけではない。ITRでは、以前から長年事業を展開している大企業がイノベーションを創出しようとする際の分析フレームワークとして、自社のコンピタンスとの整合性を重視したC-NES分析を推奨してきた(ITR Review 2012年6月号「イノベーションの創出プロセス」#R-212065)。C-NES分析は、「自社のコンピタンス(C)」を起点として、「ニーズ(N)」「外部環境の変化(E)」「シーズ(S)」を組み合わせてアイデアを創出する手法であった。この手法を推し進めてきたのは、大企業においては、ベンチャー企業とは異なり、外部環境の変化や顧客のニーズを組み合わせたアイデアの種が見つかったとしても、それが「自社のコンピタンス」と適合するかという問題が残り、従来の事業との競合や利益相反、転用できる経営資源やノウハウの有無などの問題をクリアしなければ、イノベーションが結実しないことが多いという問題を考慮したためである。

しかし、押し寄せるデジタライゼーションの潮流や第4次産業革命と呼ばれる大きな転換期の入り口といえる現在においては、海外や異業種からのディスラプター(破壊者)の出現や、新たな価値観や世界観の台頭が著しく、これまでと全く異なる発想が求められるようになっている。自社の現在のコンピタンスが、将来のコンピタンスであり続けるとは限らず、逆に足かせとなることさえあり得る時代といえる。自社のコンピタンスや過去の成功体験に縛られすぎると、現状の延長線上の戦略に終始し、イノベーションにつながる斬新な発想を阻害するという場面も多くなってきた。

そこで、自社のコンピタンスは一旦忘れ、産業構造の変化や社会的課題などの外部環境を起点とし、そこから生じる課題やニーズを洗い出し、それらに技術シーズを掛け合わせて取り組むべき戦略施策を発想する新C-NES分析手法が考え出された。自社のコンピタンスは、最後の段階で取り組むべき戦略施策を評価し、実際に狙うべき戦略施策を決定する際に考慮するという考え方である(図1)。

図1.外部環境の変化を起点とした新C-NES分析手法

出典:ITR