デジタルビジネスの進展に伴い、あらゆるデータがデジタル化されていくなか、ヒトとモノのビッグデータをどう分析し活用していくかが、ビジネスの競争力を大きく左右するようになっていく。企業は、デジタル化時代のマスタデータ管理に求められる役割や守備範囲がこれまでと大きく変わることを踏まえ、システム化の構想策定に早急に着手すべきである。
ITRが毎年実施しているIT投資動向調査では、主要なIT動向のひとつとして「マスタデータの統合」に関する企業の注力度や実施率などを問うている。最新の「IT投資動向調査2017」では、2016年度から2017年度にかけて、「マスタデータの統合」の重要度指数は0.1ポイント向上したものの、重要度が「高い」とする企業はさほど多くなく、「中」であると回答した企業が半数を超えていた。「マスタデータの統合」を「すでに実施」と回答した企業の割合は、2012年度以降年々縮小していたが、2016年度には上昇に転じた。ただし、久しぶりに実施率が上昇したとはいうものの、「3年以内に実施予定」との回答にやや増加傾向も見られることから、すぐに実施率が上がるというよりは、実施の先送りが今後も繰り延べられていくのではないかとの懸念もある(図1)。
マスタデータ管理が上昇に転じた背景としては、製造業における製品の安全性やトレーサビリティなど、コンプライアンスへの対応がより厳しくなってきていることがある。食品、化学物質、特定有害物質などに関する規制は、今後も強化されていくことが想定される。こうした規制への対応が、グローバルで重視されていくことを見越して、製品/原材料の成分、組成などの情報を一元的に管理するシステム導入を契機に、マスタデータ管理を検討する企業が増えてきているのは確かである。