企業ITのビジネス貢献度向上にクラウド・コンピューティングは欠かせないものとなった。多くの企業がプライベートクラウドに前向きに取り組んでおり、プライベートクラウド実現のためのより簡単なソリューションとしてハイパー・コンバージドインフラに注目が集まっている。ハイパー・コンバージドインフラは万能ではないため、コンバージドインフラなどの他のソリューションも含め、それぞれの特徴や制約を十分に理解したうえで製品選択を行うべきである。
ビジネス変革に企業ITが果たす役割は大きい。ビジネス変革にも種々のテーマがあるが、中でも「ビジネススピードの向上」は多くの国内企業に当てはまる重要なテーマのひとつである。「ビジネススピード向上」に対してITができることとしては、アプリケーション構築期間短縮、ビジネスにおける要求変化への迅速対応などがあげられるが、ITインフラも重要な役割を果たす。従来の手法では、サーバやネットワークの準備に1ヵ月以上かかることもあるが、ITインフラ構築の期間を短縮できたり、要求変化に柔軟かつ迅速に構成変更できたりすれば、ビジネススピードの向上に貢献することができる。これらを実現するソリューションとしては、クラウド・コンピューティング(以下、クラウド)が最も有力といえる。クラウドには、事業者がITリソースを所有しサービスとして企業に提供する「パブリッククラウド」と、ユーザー企業がITリソースを自社資産として所有しオンプレミス環境に構築する「プライベートクラウド」に分類される。
図1に国内企業におけるクラウド活用動向を示した。現在利用している企業の割合は、「SaaS」「プライベートクラウド」「PaaS」「IaaS」の順に高い。ITインフラのパブリッククラウドであるPaaSおよびIaaSをすでに利用している企業は20%前後であり、多くの企業が利用しているとはいえない。プライベートクラウドを利用している企業も多いとはいえないが(25.2%)、PaaSおよびIaaSよりも多くの企業が利用している。
図2には、パブリッククラウドの課題を問うた結果を示した。「いつサービス停止になるかわからない」というサービス継続性に不安を感じる企業が最も多いことがわかった。次いで「セキュリティレベルが低い」「自社資産にできない」が続いている。セキュリティに関しては、一般のユーザー企業が構築運用するITインフラと専門事業者がビジネスとして提供するITインフラのどちらのセキュリティレベルが高いかを考えれば、杞憂にすぎないといえるし、コストに関してもパブリッククラウドの使い方次第でオンプレミスよりも低減できる場合があるため、致命的な課題とはいえない。しかし、自社で運用したい企業に対しては、パブリッククラウドは解決手段にならない。このような背景から、プライベートクラウドを指向する企業が一定数存在するのである。