ワークスタイル変革が、これからの企業において重要な経営課題であることは論を俟たない。ただし、変革を進めるうえで当の働き手の意向を無視することもまた現実的ではない。本稿では、2016年9月に実施したアンケート調査の結果を基に、従業者が考える「未来の働き方」の姿について考える。
安倍首相の肝煎りで始まった「働き方改革実現会議」の影響もあり、国内企業においてもワークスタイル変革に向けた具体的な準備に取りかかる企業が増加している。少子高齢化による労働人口の減少や高齢化に代表されるように、企業が変革に取り組むべきマクロ的な要因は多数存在するが、一方で無視できないのが当の働き手の意向である。
ITRは2016年9月、国内企業に勤務する人がこのワークスタイル変革とIT活用についてどのような考えをもっているかを明らかにすべく、シトリックス・システムズ・ジャパンと共同でアンケート調査を行った。調査対象としたのは、1,000人以上の大企業に勤務し、かつPC、スマートデバイスを日常的に(1日当たり3時間以上)業務に利用している、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる個人である。ITRが保有する調査パネルに対して依頼し、228件の有効回答を得た。
まず、本調査で明らかになったのは、極めて多くの人がより自由な勤務形態を望んでいるという事実である。自身の働き方について、「現在」「5年後の予想」「理想」の3つの視点で問うたところ、現在は「決められた時間、決められた場所で」業務を行っている人が大多数であるが(75.9%)、5年後の予想ではその割合は半数を下回り(45.6%)、理想とする働き方ではさらに大きく割合が減少した(18.4%)。それに対して、「勤務時間、勤務場所ともに自由に選択できる」働き方については、現在行っている人は5.7%にすぎないが、5年後の予想では10%を超え、理想とする働き方では過半数を超える51.8%に上っている(図1)。この結果は、従業者の間で働き方の現状と理想とのギャップが極めて大きいこと、今後5年間でそのギャップが多少なりとも解消へ向かうことを望んでいることを物語っている。