国内企業のBCPの多くは、主要拠点における大震災による被災といったリスクシナリオに基づいて策定されているが、それだけでは、局所災害やパンデミックといった想定外のシナリオに必ずしも対処できない。BCPの実効性を高めるためには、結果事象ベースBCPの考え方を取り入れることが有益である。
災害時に特定された重要業務を中断させず、また中断した場合も迅速に再開させることを狙った経営戦略がBCPである。日本においては、東日本大震災、そして2016年4月の熊本地震の例をあげるまでもなく、災害といえばまずもって地震を想起する。しかし、これは日本特有の事情といえる。例えば、欧州ではテロ、米国ではストライキや大停電などが、主要な災害リスクのひとつと捉えられている。また、日本では、建物免震を備えるデータセンターは珍しくないが、例えば、オーストラリアやシンガポールにおいては、ハイエンドのセンターであっても免震機構を備えていない例が多い。
こうした事情から、国内企業のBCPは、震災リスクに依拠して策定されることが通例である。すなわち、復旧計画は、「大震災」という特定の原因を想定したリスクシナリオに基づいて検討される。例えば、「東京湾南部を震源地とする大地震の発生にて、湾岸エリアにて震度7を観測。代替サイトで主要業務を継続する」といったシナリオを立てて、それに沿ったBCPを立案する。これをここでは、「原因事象ベース」のBCPと呼ぶ。
一方、海外に目を向けると、特定の原因に依拠せず、複数のリスク要因を視野に入れたBCPを策定するのが一般的である。つまり、ストライキや新型インフルエンザといった原因にかかわらず、事業継続を脅かす何らかの結果、例えば停電、通信遮断、要員不足などが生じたら、その事象に応じて復旧するという考え方である。これを、「結果事象ベース」のBCPという。
国内企業においては、しばしば原因事象ベースの問題点が指摘されることがあり、また、結果事象ベースが有益な側面もある。そこで、各々の特性を見ることで、実効性の高いBCPのあり方を考察してみよう。