ここしばらく、大きな動きのなかったコミュニケーション/コラボレーション分野だが、業績好調の企業を中心に投資対象として改めて注目が集まりつつある。また、新規参入ベンダーも相次ぎ、市場に変化が生じる兆しも見えている。
メール、グループウェアに代表されるコラボレーション基盤は、すでに数多くの企業にシステムが行き渡っており、市場としては成熟した状態にあると見られている。だが、ここにきて、企業からこの分野のシステムの刷新、見直しに関する相談を受ける機会が増加している。ちなみに、ITRが2015年秋に実施した「IT投資動向調査2016」から、主要なアプリケーション分野について、2016年度中に「投資を拡充予定」ないし「新規導入予定」と、極めて前向きな投資意欲を示した回答者の割合を抜き出してみたところ、自社の業績を「非常に好調」と認識する企業において、コラボレーション分野への投資意欲が極めて高いことが確認された(図1)。
一般に、好調な企業ほどIT投資に対する意欲も高い傾向が示されるのが常ではあるが、業績の影響があまり反映されていない「営業支援・顧客管理」「財務会計」「人事・給与・勤怠」などと比較すると、コラボレーション系システムがとりわけ好調企業の間で重視されていることがわかる。なかでも「ビデオ会議/Web会議」「ファイル共有・ファイル転送」「グループウェア/コラボレーション」の3項目は、「非常に好調」な企業が投資対象として注目するアプリケーション分野のトップ3である。
コラボレーション系システムに好調企業が目を向けつつある背景には、さまざまな要因が考えられる。ビジネスの拡充や海外進出などに伴うスタッフ数の急激な増加や組織変更への対応、企業間でのジョイントプロジェクトの拡大と情報共有シーンの拡大、モバイルデバイスの導入とテレワークへの対応、激化する人材獲得競争で優位に立つための就労制度改革の実施などである。「企業成長の原動力が人的資本である」とは、かねてから多くの経営者が口にする言葉であるが、コラボレーション分野への投資も、その人的資本を最大化させるひとつの手段といえる。ビジネスプロセスの標準化・効率化に向けた取り組みが一巡するなかで、今後、より多くの企業がコラボレーション・システムに改めて着目することは十分考えられる。