DELL社は2015年10月12日にEMC社を670億ドル(約8兆円)で買収すると発表した。買収が成立した場合、同社は、総合的なハードウェア製品ライナップを持つ世界最大規模のベンダーとなる。しかし、ハードウェアのコモディティ化とクラウドコンピューティング化が進む現在において注目すべきは、仮想化とクラウド化に関する技術を持つEMC社傘下のVMware社の今後の動向である。
DELL社と言えば、PCやタブレットなどのクライアントデバイスが有名であるが、2007年にEqualLogic社を、2011年にForce 10 Networks社をそれぞれ買収したことで、現在では企業向けのサーバ、ストレージ、ネットワーク機器も手掛けている。特に2010年以降は17社ものソフトウェア企業を買収しており、運用管理、セキュリティ、データ分析、統合ミドルウェアなどのソフトウェア製品の提供まで事業の幅を広げている。
一方、EMC社は企業向けのストレージ製品が有名であるが、Cisco Systems社と共同で始めたVCE社を買収することでサーバ事業を手掛けており、2004年に仮想化ソフトウェアのVMware社、2006年にはセキュリティソフトウェアのRSA Security社を買収した。また、2012年には2010年に買収したデータウェアハウス用のデータベースを持つGreenplum社と、VMware社が2009年に買収していたSpringSource社を母体とする新たなグループ企業としてPivotal社を設立するなど、M&Aにより事業領域を拡大してきた。
図1は、EMC社を買収した後の新生DELL社の事業領域の概要を示したものである。ハードウェアに関しては、ネットワーク機器の品揃えが薄いものの基本的に全領域を網羅しており、IBM社がLenovo社にPC事業とx86サーバ事業を売却し、HP社も分社化した現在、ハードウェア関連事業を営むベンダーとしては、世界最大規模となる。また、ソフトウェア関連でも、仮想化、システム統合関連のミドルウェア、モバイル管理、セキュリティ関連、データ管理と分析など幅広い製品群を保有しており、今後の企業ITがハイブリッドクラウド化を目指し、ビッグデータやIoTの利用を進めると考えた場合はかなり強力な品揃えを持ったと言える。