2015年9月30日、日米欧22行が提携し決済システムを安価に構築する報道があった。金融とITを組み合わせたフィンテックが社会に広まってきた先進事例だ。この決済システムは、ブロックチェーンと呼ばれる技術が利用されている。ブロックチェーンは仮想通貨に利用されている技術だが、その応用範囲は広く、仮想通貨以外にも応用できる。本稿ではブロックチェーン技術を考察し、その活用方法について提言を行う。
ブロックチェーンはデータの集合体で、可用性が高く、改ざんが極めて難しいという特徴がある。世界中のサーバで構成されるP2Pネットワークで管理されており、中央管理サーバは存在しない。P2Pネットワーク上に冗長構成が確立され、あらゆるサイバー攻撃からデータを守ることが原理上可能な革新的技術といえる。
冒頭に掲げた新決済システムの構築は、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックス、バークレイズなどの欧米大手行と、アジアからは三菱UFJフィナンシャル・グループが唯一参加している。金融機関の海外送金手数料を10分の1程度に下げることを目標にしており、新しい国際規格作りと海外送金市場の主導権掌握が狙いだ。
ブロックチェーンは、仮想通貨に利用されているが、それに限定される技術ではない。既存の技術・仕組み・制度が、ブロックチェーンを土台にして生まれ変わる可能性がある。その意味で、ブロックチェーンは、新規事業の根幹技術になり得るとITRでは考えている。