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【R-215113_6962988451】パブリッククラウド選定上の留意点

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Sep 28, 2023 2:49:27 PM

パブリッククラウドは企業のビジネス推進に役立つ革新的ITである。その活用については、従来のITソリューションとは異なる考え方を採用すべきである。特にベンダー選定においては、従来のパッケージやハードウェアと同じ考え方で選定を行った場合、クラウドの価値を十分に発揮できない可能性が高い。

大企業中心に進むクラウド活用

大企業のクラウド活用が進んでいる。図1に、国内ユーザー企業におけるIaaS(Infrastructure as a Service)の活用動向を企業規模別に示した。中小企業ではIaaSの活用は進んでいないが、5,000人以上の大企業においては、すでにIaaSを活用している企業と1年以内の導入を計画している企業の割合が約半数を占めていることがわかる。この傾向は、PaaS(Platform as a Service)およびSaaS(Software as a Service)でも同様であった。つまり、国内大企業の多くがクラウドに前向きなのである。ここでの「クラウド」とは事業者がサービスとして提供しているクラウドのこと(いわゆるパブリッククラウド)を指しており、ユーザー企業が自社所有資産でクラウド的なIT基盤を構築運用する「プライベートクラウド」は対象外である。

図1.国内ユーザー企業における企業規模別IaaS活用動向

出典:ITR(2015年2月調査)

クラウドの特徴にはいろいろあるが、「いつでも使いたいときに使いたいものだけ利用できる」ことが重要なポイントのひとつである。クラウドでは、ソフトウェアはもちろんのことハードウェアですらも、使いたいときだけ「利用」することが可能である。クラウドサービスにもよるが、1時間だけの利用も不可能ではない。世間では、カーシェアリングやウェアシェアリング(服飾のレンタルサービス)など購入せずに利用するビジネスが最近台頭しているが、ITの領域ではそれらに先駆けてクラウドが登場したといえる。以前よりリースを利用したIT導入はあるが、このようなシステムは基本的にユーザー企業側にリスクがあり、いつでも制約なく利用停止することはできないし、ソフトウェア、ハードウェアや機能の追加/変更も容易ではない。また、ソフトウェアやハードウェアのレンタルも従来から存在しているが、選択肢が限られており、最低契約期間も長い。

これまでソフトウェアやハードウェアは「購入」が基本であった。「買った物は自分のもので、長い間大切に使い続ける」のは、多くの日本人のメンタリティにあっていたといえる。しかし、時代は「所有して長い間大切に使う」から、前述のカーシェアリングのように「使いたいものを使いたいときだけ利用する」に変化しているのだ。この流れが今後一層加速することは間違いない。

図2に「クラウド利用」と従来の「購入」の比較を行った。基本概念として、「購入」とはソフトウェア/ハードウェアの「永久保有」であり、クラウドは「期間利用」であることを理解しておくことが重要である。クラウドは、初期費用が不要で使いたいものを使いたい期間だけ利用することが可能で、利用中のサポート費用も利用費用に含まれている。途中で使いたいものが変化しても、クラウドで提供しているものであれば自由に選択できる(費用は変化する)。購入の場合、事前に使うと想定していたが実際には使っていないものを解約することは困難だが、クラウドの場合、いつでも使わないものを削減することは可能である。購入の場合、バージョンアップには別途費用が必要であることが基本だが、クラウドの場合、利用費用に包含されている。

逆に言えば、クラウドの場合、ユーザー企業が望む望まないにかかわらず、否応なしにバージョンアップや機能変更が発生する。購入の場合、初期バージョンを使い続けることが可能だが(古いバージョンの場合、ベンダーのサポート対象から外れることが多いが、利用継続は可能である)、クラウドの場合は自らの意図しない変化が常時発生すると考えた方がよい。

図2.「クラウド利用」と「製品購入」の比較

出典:ITR