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【R-215093_6962993490】重要となるマーケティングROI

作成者: 株式会社アイ・ティ・アール|Oct 1, 2023 2:47:23 AM

デジタル化によってマーケティングに求められる役割は、従来の認知度やブランドの向上から見込み客の発掘といった、より直接的な売上げへの貢献に変わりつつある。その結果、マーケティングへの支出に対する見方も経費から投資へと変わり、今後、より明確な投資対効果が求められることが予測される。

マーケティングROIが求められる背景

マーケティングROIの考え方は、欧米では10年以上前からマーケティング投資に対する適切な意思決定と業績測定を行うことを目的とした指標として活用されている。昨今、日本においてもマーケティングROIを可視化しようとする動きが活発化し始めているが、その背景には主に3つの要因があげられる。

①マーケティング・チャネルの多様化:インターネット媒体の台頭によってマーケティング施策は多様化している。従来はマス媒体(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)とSP媒体(交通広告、チラシ、看板、ダイレクトメール)への広告出稿がマーケティング活動における主流であったが、昨今では、モバイルネットワーク、スマートデバイス、そしてSNSの普及によって、消費者がインターネット媒体に接触する機会が増加している。その結果、企業は限られたマーケティング予算をどの媒体にどれだけ配分するかを決めるために必要な合理的な指標を求めている。

②顧客ニーズの多様化:消費者一人ひとりのニーズに応じた、より高度なマーケティング施策を実施することが求められている。日本企業はこれまで、新製品や新サービスを開発し、市場に投入することで売上げを伸ばしてきた。古くは、1950年代のテレビ、洗濯機、冷蔵庫、2000年代では、液晶テレビ、デジタルカメラ、DVDレコーダーのように三種の神器といった呼び方で、需要を大きく喚起した製品があった。しかし、顧客ニーズの多様化によって、過去のように大きく需要を喚起する製品やサービスが登場しにくくなった現在では、製品の機能、内容、価格だけでなく、消費者一人ひとりに対して購買意欲を高める高度なマーケティング施策の必要性が増してきている。

③マーケティング予算の効果的活用へのニーズ:企業は限られた予算で、より効率的なマーケティング施策を実施しなければならない状況にある。マーケティングによる直接的な売上げへの貢献が求められてきているが、企業がマーケティングに投資する予算はそれほど伸びていないようである。図1に示したのは、電通が毎年発表している国内における広告費の2005年から2014年までの10年間の推移を表したものである。広告費がマーケティング予算の全てではないが、通常、広告費はマーケティング予算の大半を占めている。この数字が2011年以降は増加傾向にあるものの、リーマンショック以前の水準までは回復しておらず、今後10年間のCAGR(年平均成長率)はマイナス1.1%と予測されている。

図1.国内の広告費の推移

出典:電通「2014年 日本の広告費」を基にITRが作成