クラウドサービスの利点を積極的に活用し、顧客企業に価値をもたらすクラウド・インテグレーターの存在感が増している。IaaS/PaaSを利用したシステム構築において、従来のサーバの設置場所がクラウド事業者に移っただけと考えるのではクラウドで成果を挙げることは困難である。企業はパブリッククラウドの価値を真に理解したインテグレーターを活用すべきである。
ITR Review 2015年4月号「ITR User View:パブリッククラウド動向調査2015」(#R-21504U)において、国内ユーザー企業におけるパブリッククラウド利用率の拡大傾向に陰りが見え始めたと書いた。これは中小〜大規模にわたる企業規模全体の平均値から見たものであり、大企業は積極的なパブリッククラウド利用を進めている。図1に5,000人以上の大規模国内ユーザー企業におけるPaaSおよびIaaSの利用動向を示すが、いずれも半数前後の企業が前向きな姿勢を示している。
IaaSを世界で初めて提供したAmazon Web Services(AWS)社は、好調にビジネスを拡大しているが、その成功要因の1つに「エコシステムの形成」がある。AWS社のエコシステムに大きな役割を果たしていているのが「クラウド・インテグレーター」や「クラウド・ブローカー」といった、AWSをプラットフォームとしてシステム構築/運用保守や付加サービス提供を行うIT企業群である。現在では、Microsoft AzureやIBM SoftLayer/BluemixなどのIaaS/PaaSもこのようなエコシステムを構築し、クラウド事業者単独では獲得が困難な数多くの顧客企業を短期間で獲得することに成功している。
ITRではクラウド・エコシステムの構成企業を図2のように分類している。クラウド・インテグレーターには、既存のSI企業がクラウドを活用したインテグレーションを行っている場合と、比較的小規模で歴史の短い企業が特定のクラウドサービスに特化してビジネスを行っている場合がある。クラウド・インテグレーターはIaaSやPaaSの特長を活かし短期間かつ安価でシステム構築を行ったり、自動化ツールを駆使して安価にシステム運用を行っている。このことから、従来のエンジニアの作業工数の積み上げを基準にビジネスを行うSI企業のやり方に疑問を持つユーザー企業から高い評価を獲得している。また従来型SI企業に比べ、小回りがきくため、企業の非IT部門との取り引きも多い。
「クラウド・コンサルタント」および「ハイブリッドクラウド支援事業者」は、従来のコンサルタントやインテグレーターと大きな違いはない。「クラウド・ブローカー」は自社以外のクラウドサービスに独自のサービスを付加したり、複数のサービスの組み合わせで新たな価値を提供したりする。ブローカー・サービスは、下記の3つに分けられる。