多くの企業が3年または5年のIT中長期計画を策定している。企業ごとにIT中長期計画の推進方法はさまざまであるが、IT中長期計画を十分に活用できていない例も多い。IT中長期計画をどのように策定し、実行していくべきか、その有効なベストプラクティスが存在しない実態がある。本稿では、IT中長期計画の推進をPDCAの視点から検証し、有効な解を確かめることにする。
IT中長期計画を策定するときに、最も大事なことは事実を冷静に分析する姿勢で臨むことだ。多くの企業の場合、IT中長期計画を策定する部門は、IT企画部のようにIT全体を統括する部門である。IT全体を統括する部門であるがゆえに、システム開発部門やシステム運用部門などを導けるような理想的な計画書に仕上げたいと思いがちだが、まずその思想を脱ぎ捨てるところから始めるべきである。
事実を冷静に分析する態度で策定に臨めば、おのずと現状を把握することから始めることが必要だと分かり、初めの第一歩を踏み出せる。策定部門は「素晴らしいIT中長期計画書を策定する」と意気込んで開始するのではなく「策定の前にまず現状の把握から始めよう」と、重い荷物を一旦足元に置くことが重要だ。PDCAの視点で言えば、Plan(計画や策定)からではなくCheck(評価や現状把握)から始める事がスタートラインとして重要だ。
PDCAは、Plan(計画や策定)からスタートするよう解釈されているが、実際はCheck(評価や現状把握)から開始するほうが合理的な場合が多い。現状を把握しないまま計画すると、「絵に描いた餅」になるばかりか、「到達できない目標」を掲げてしまう可能性がある。その結果、実行現場を疲弊させ、意図せず悪循環の根源になってしまうことがある。
ITRでは、PDCAサイクルの開始ポイントとして、Check(評価や現状把握)から進めることを提唱する。これは、IT中長期計画に限った話ではなく、多くの場合に最適な開始ポイントであると考える。以下では、PDCAを改め、CAPDとしてIT中長期計画の推進を考察する。