グループ/グローバルを視野に入れたITガバナンスを構築し、全体的な最適化を図る取り組みは多くの企業で模索されている。一方で、企業によって組織やシステムに関するこれまでの経緯や現状の運営形態は異なり、求められる取り組みも同じではない。各事業体とのコミュニケーションや情報共有を含む協調関係の成熟度に即した取り組みが求められる。
グループ経営の重要性の高まりやビジネスのグローバル化に呼応して、多くの企業がグループ/グローバルを視野に入れたIT運営のあり方を模索している。ITRに寄せられる質問も、技術標準化の推進、シェアードサービス化、ERPなど業務システムの統合・共通化、IT投資の集中管理、内部統制の強化、横断的なIT組織の編成、人材交流など非常に多岐にわたる。これらは、的を射た重要な課題であることは間違いないが、実は非常に回答が困難な質問でもある。それは、各企業におけるグループ/グローバルへの対応状況によって取り組むべき施策やアプローチが大きく異なるためである。
例えば、それぞれの海外拠点やグループ企業(以下、事業体)がIT人材をどれだけ抱えているのか、現時点でどのようなシステムを利用しているかといった状況を本社IT部門がまったく把握していない段階で、シェアードサービス化やシステム共通化の是非を議論したり、目指すべき姿を決定したりすることはできない。また、経営やビジネスの遂行形態として集権型を目指すのか、権限移譲により各事業体の自由裁量を重視した運営を目指すのかによってもITに関する方針は変わってくる。各事業体における情報化の進展度合い、本社コア事業との関係性の強弱、合弁・買収などの経緯など、考慮しなければならない点は多岐にわたる。グループ/グローバルIT運営において、ベストプラクティスが確立しているわけではなく、多くの企業が悩み、試行錯誤を続けている状況といえる。