将来の働き方やワークスタイル変革を検討する際に、1人1台のパソコンが配置されたいわゆるナレッジワーカーを対象の中心とすることが多い。しかし、業種によっては主にパソコンを利用しない現場の作業者の生産性や判断力が業績を大きく左右する。タブレット端末などのスマートデバイスの出現がビジネスの最前線を大きく変貌させようとしている。
製造業の生産現場における改善活動の進展と比べて、ナレッジワーカーの生産性の低さが日本の課題であるとの論調をよく聞く。確かに、長く不毛な会議、氾濫する電子メール、分断された稟議・承認プロセスなど、ナレッジワーカーの業務効率を阻害する問題は多くの企業が抱えているといえる。そのため、多くの企業が業務改革やワークスタイル変革に取り組む際に、ナレッジワーカーを第一の対象と考える傾向にある。
一方で、情報化の手が行き届いていない現場業務を多数抱える企業は少なくない。小売業、サービス業、運輸業、建設業、医療・福祉業、外食・ホテル業などは人手によるが作業が多い業種であり、それ以外の業種においても設備保全、保守サポート、倉庫・輸配送、顧客対応などパソコンに頼らない業務に従事するスタッフを多く抱えている。また、多拠点を展開する事業や、場所を移動して作業を行うスタッフを多く擁する事業形態も存在する。こうした現場業務の情報化やワークスタイル変革は遅々として進んでいないのが実態といえる。